魔法少女まどか☆マギカ マミさんスレ100スレッド達成記念 自作二次小説 『追憶の心、共に歩む未来。』 その日俺は彼女に連れられ、この地にやってきた。 聞くところによるとここは彼女が学生時代をすごした街なのだそうだ。 数日前に一緒に来て欲しいところがあると言われ、休日を利用してこの地を訪れた。 彼女は手に花束を抱えている、その彼女の顔はどことなく懐かしそうでもあり寂しそうでもあった。 いつもと違う神妙な面持ちの彼女の背中を見つめつつ、俺は彼女に案内されるまま目手地を目指す。 ほどなくして目的地にたどり着く。 彼女は目の前のそれに花束を備え、そして笑顔で話しを始めた。 「お父さん、お母さん久しぶり、最近顔を見せにこれなくてゴメンね。  今日はね、二人に大切な報告があって会いに来たの。」 訪れたのは彼女の両親のお墓だった。 自分のとなりで手を合わせ目を閉じている彼女の名は『巴マミ』かねてより恋人つき合いをしている俺の最愛の女性だ。 いや、もうすぐ巴ではなくなるのか、数日後には彼女の姓は自分と同じものになり自分達の間柄も正式に夫婦と呼ばれるものになるのだ。 彼女は自らの少女時代についてあまり深くは話そうとはしなかった、きっと自分には想像もつかないような壮絶な人生を送ってきたのだろう。 自分の知っているのは、幼い頃に両親を亡くし、それから頼る人もほとんどいない中で自分の力で必死で生きた来たこと、そしてそんな辛い人生の中でできた数少ない友人の1人とさえも早いうちに別れが訪れてしまったことくらいだった。 やがて、彼女がゆっくりと目を開く。 彼女の目には優しさに満ち溢れた笑顔が広がっている。 俺はそんな彼女の表情に今更ながら見とれてしまっていた。 「お父さんお母さん、私ね今度結婚することになったの。  えぇ、そうよ今私の隣にいるのがそのお相手、私の旦那様になってくれるっていう奇特な人。」 彼女の視線がこちらに向けられる、俺はぎこちない動作で墓前のご両親に挨拶と自己紹介をすませる。 そして一度深呼吸をして、今の自分の率直な思いを伝えた。 彼女を、マミを心のそこから愛しているということを、これから先けっして彼女を裏切らずに生きていくということを、そして生涯まもり抜いていくと心に誓ったことを…。 それは天国のご両親に伝えようとしているのか、すぐそばにいる最愛の人に聞かせているのか、はたまた自分自身に言い聞かせているのか自分でも分からなかったが、ただひとつはっきりといえる事があるとすれば今の言葉が嘘偽りのない自分の正直な気持ちだということだ。 ふと、我に返る。 どうやら相当クサイ台詞を吐いてしまったようだ、隣にいる彼女はどのような表情をしているのだろうか確認するのが少し怖かった。 俺は恐る恐る彼女のほうへ目を向けようとする。 が、その前に逆に彼女のほうが自分の視界に入り、そのまま胸に飛び込んできた。 突然のことで思わずよろけてしまいそうになるが足に力をこめて何とか転倒するのを堪えた。 「信じていいのよね・・・、その言葉・・・。」 俺は言葉ではなくマミの肩を強く抱きしめることで返事を返す。 「ありがとう・・・。」 俺はしばらく彼女の身体を抱きしめ続けた、彼女への想いをきちんと形で表す意味もあったが、なにより自分自身が彼女の温もりを存在をこの手で感じ取りたかったのだ。 やがて彼女は俺の身体からゆっくりと離れると両親のほうへと向き直り、再び会話を始めた。 「それとね大事な報告って言うのは実はもう1つあるの、これはこの人にもまだ秘密にしておいたことなんだけど…、」 確かに両親の墓前に結婚の報告に行きたいという話は聞いていたが、もう1つ報告があるというのは自分にも初耳だった。 一体何のことだろうか? 「あのね私ね、どうやらお母さんになっちゃったみたいなの。」 驚いた。 きっと今の俺はものすごくマヌケな顔をしていることだろう。 狐につままれたような、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしつつもどことなくニヤけてしまっている、とても人様の前に出せないような顔のハズだ。 無論、そのような覚えがないわけではない。 仮にも結婚を目前に控えた仲なのだ、彼女と共に夜を過ごすことも珍しいことではなかった。 とはいえこのタイミングで数日前に一大決心をし共に生きたいとの想いを告げ、それを承諾されたばかりなのだ。 きっと俺とマミの間に宝を授かることになるのはもう少しあとになってのことだと思っていた。 俺は思わずマミの肩を掴み、先ほど両親のほうへ向きなおしたばかりの彼女の身体を再び自分のほうへと向けた。 事の真意を確かめたかったが言葉が見つからず、しばしの間沈黙の時間が訪れる。 俺の意思を察したのか、マミは優しい表情で微笑み今の言葉が真実であることを告げる。 再び俺は彼女の身体を抱きしめる、どことなく先ほどよりも気を使って優しく抱きしめているように思えるのは気のせいだろうか? 次から次へと嬉しさが込み上げてきた。 身体が震えてしまっているのが自分でもわかる。 「もう、あんまりくっつきすぎるとお父さんに叱られてしまうわ。」 彼女のやわらかい言葉に我に返りゆっくりと彼女の身体から離れる。 「大丈夫、間違いないわ、お医者様のお墨付きよ。 手帳だってもうもらってあるんだから。」 「本当はね、この間プロポーズされた時にはなんとなく分かっていたの。」 「でも確証がなかったから伝えようかどうしようかって迷っていたら急に指輪を渡されてプロポーズされちゃったでしょ?  私あまりにも嬉しくって頭がまっ白になっちゃって・・・、あぁ私この人で良かったんだって間違いなかったんだって思わず涙がでそうになっちゃってそれで言いそびれちゃったの。」 涙が出そうになったどころか、あの時の彼女は間違いなく泣いていた気がする。 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。 俺は先ほどからずっと高速回転を続けている脳をなんとか正常に戻そう模索する。 「お医者様の診断をいただいたのはつい先日のことよ。本当なら真っ先に貴方に知らせるべきだったんでしょうけど、どうしてもお父さんと一緒に知らせたくって…、あっあと驚かせたかったていうのもあるかしら。」 そういってマミはイタズラっぽく微笑む。 やれやれ本当に彼女には適わない、でもそんな彼女だからこそ俺は彼女を愛し、共に生きようと決めたのだ。 俺とマミはあらためてご両親に祈りをささげ、彼女自身とお腹の中にいるもう1人の大切な存在と共にこれからの歩むことを誓った・・・・・・。 帰り道、俺は何気なく生まれてくる子供は女の子がいいか、もしくは男の子がいいか尋ねてみた。 すると彼女はこちらのほうへ目をむけ口を開く。 「生まれてくる子はきっと女の子よ。」 一瞬既に医者に調べてもらっているのか思ったが、さすがにまだそれが判明するには早いよう思える。 どうして分かるのかと尋ねると彼女は「ただなんとなくそんな気がする。」というだけだった。 おそらくマミの言うとおりなのだろう、こんなときの彼女の言葉は不思議とよく当たるのだ。 今までも何度か似たようなことに遭遇したことがある。 なら名前も女の子らしいものを今から考えなくては、俺はそう提案する。 「そのことなんだけど実はもう名前は決めてあるの・・・。」 俺はまた驚かされることとなった、彼女の感が良く当たるとはいえさすがに気が早いようにも思える。 まぁ、それがマミらしいといえばマミらしいのではあるが。 マミは手にしていたバックの中をゴソゴソとまさぐると可愛らしいイラストの書かれた手帳をとりだした。 母子手帳というヤツだ、自分も実物を見るのは初めてになる。 その手帳を良く見ると表紙の部分にマミの名前と、もう1つ生まれてくる子供の名前を書く欄にすでにひらがなで名前が書き込まれていた。 女の子らしい、そう思える実に可愛げのある名前だ。 きっとこの子はとても優しく素直な子に育つ、そう思える素敵な名前だった。 「何故だかはわからないのだけれど、私の子供として女の子が生まれることがあったらどうしてもこの名前にしたかったのよね・・・。」 そういって大切そうに手帳を抱きしめるその仕草に不思議と暖かいものが込み上げてくるのを感じた。 とても良い名前だと思うと、俺は今の率直な気持ちをありのままに彼女に伝えた。 そしてマミはとびきりの笑顔をこちらに向けてこう言った・・・、 「えぇ、すごく素敵な名前でしょう?」                       おわり