パパが死んだ。  ママは、ジュニアとリトルに物心が付くよりずっと前に死んでいたから、二人が人の死を目にするのはこれが最初だった。 「パパが目を覚まさなくなって、息もしていなかったら、それは死んだってことだ。そうしたら土に埋めてくれ」  生前のパパがそう言っていたのを思い出し、二人はパパが死んだのだという事を理解した。  二人ともしばらくは事態をよく飲み込めなかったが、もう二度と話したり、遊んだりできないのだとわかって、やがてリトルが泣き始めた。  ジュニアは言いつけを思い出し、パパを埋める穴を掘り始めた。土は柔らかかったけれど、小さなジュニアがパパの全身が入るだけの穴を掘るのは大変だった。リトルはいつまでも泣き止まず、あまり手助けにならなかった。  汗まみれになってなんとか穴を掘り、二人でパパの体を運んで埋めた。土を被せてしまうと、リトルが大きな石を持ってきて埋め跡の上に置いた。 「だって、こうしないとパパの居場所がわからなくなるじゃない」  パパに教わったところでは、死んだ人間を埋めるのは、分解される途中の様子が見苦しいからだった。普通のゴミは土の上に捨てるだけで分解されてなくなってしまうが、人の体ほど大きいと、すぐには分解されずその途中の様子が見えてしまう。それでも、生きていないものは、土に触れていれば最後には分解されて消えてしまうはずで、ジュニアにはリトルの言うことがよく理解できなかった。しばらくすればこの下のパパの体は消えてしまうのだし、仮に消えなかったところで、もう何かを話したり教えたりしてはくれないのだ。