東方紅魔郷 その後 ――ネ実東方 鬱エンド大会(?) 「あんたなんか要らないわ」 何を言われたのかわからなかった。 そこは私が座る椅子。しかし、今は妹が座っている。 「人間に敗れただけでなく、その人間に尻尾を振る始末。それが吸血鬼の姿?  フン…そんなのが紅魔館の主なんていい笑い者。  そんなに尻尾を振りたければ、犬のように野山をうろついていればいいわ」 妹の顔は、冗談を言っているようには見えない。 「え…と、咲夜?」 「私は、紅魔館の主たりえる者に仕えるメイドです」 「な…っ! 私が主たりえないとでも――」 「フランドール様の親族ということで、丁重におもてなしさせていただきます」 「――っ!? パ、パチェっ! 何か言って――」 「フランから本はいくらでも読んでいいと言われたわ」 「え――?」 「そうね…野山で消極的に生きていく方法なら調べてあげてもいいわよ」 「そんな…どうして…紅魔館に私の居場所が」 「あのー、私は別に」 「無いって言うの!?」 「――門、行ってます…」 そうして、紅魔館を追い出されてしまった。 野山で生きるなんて私にはできない。 ずっと紅魔館にいたから、親しい友人もあまりいない。 頼れる者は、ほかにいない―― 「なんで私があんたの吸血鬼生相談に乗らないといけないのよ!」 「だって、追い出されたし…みんなが要らない子だって言うし…」 「だぁぁぁ! いつまでも泣くな! 鬱陶しい! だいたいあんた、夜の王だとか言ってたのは何なのよ!」 「今は昼」 「ああ、そうですかそうですか」 「それで頼みがあるんだけど…私を神社に置いてくれない…?」 「神社に吸血鬼って、いったい何の冗談よ…」 「だって…他に頼れる人いないし…紅魔館には戻れないし…」 「だから泣くな! ったく、まぁいいわ。野たれ死なれても寝覚めが悪いし。でも、条件があるわ。  まず、里の人間は襲わないこと」 「霊夢は?」 「ダメに決まってるでしょう! ほんとに襲ったりしないでしょうね…  とにかく、血は紫あたりから貰ってくるから、それで我慢なさい」 「ちょっとくらいいいじゃない…」 「黙れ。それと仕事もやってもらうから。まずは神社の掃除」 「日光、ダメなんだけど…」 「あー、そうだったわね…。じゃあ、神社の中だけでいいわ。  それと…レミリア、料理は作れるの?」 「できるわけないじゃない」 「ほんとに使えないわね…」 「う…」 「あーもう、泣かない泣かない! これから教えるから! ちゃんと覚えるのよ!?」 「覚えたら『もう一人で大丈夫ね』とか言って追い出したりしない…?」 「しないしない。言っとくけど、ウチはタダで食わせるほど余裕はないわ。働かざるもの食うべからず。  でも、ちゃんと働くなら相応の待遇はする。いい?」 「わかった――」 これでなんとか生きられる。 明日のことはわからないけど、飢え死にすることはたぶんないだろう。 今は、早く新しい生活に慣れないといけない―― ――しばらく後―― 「霊夢ー! 白黒が来たわよー!」 「お、誰だお前。霊夢に妹なんていたか?」 「何言ってんのよ。レミリアよ、レミリア」 「なんだって!?  あー…確かにレミリアだ。しかし、どうして霊夢の服着てるんだよ」 「この子、何も持たずに出てきたんだもの。合う服なんて私が子供の頃のものしかなかったのよ」 「『この子』って言った! 私は子供じゃないって何度も言ってるでしょー!」 「怒ってないで、掃除は終わったの?」 「う…やってくる」 「くっくっく…本当に姉妹のようだな」 「冗談はやめて。神社に吸血鬼ってだけでも悪い冗談なのに」 「追い出さないって言ったー!」 「追い出したりしないって! ったく臆病なんだから…」 「いいお姉さんだな、霊夢」 「…はぁ」 「あのー、妹様…?」 「何よ」 「『お嬢様のプライドを刺激してカリスマ復活大作戦』…ですよね?」 「そうよ」 「お嬢様、神社に馴染んでおられますけど…」 「知らない」 「非常に出て行きづらいのですが…」 「だから知らない! 作戦立てたのはパチュリーよ! 失敗は私のせいじゃないもん!  だいたいあいつが全部悪いんじゃない! 何よあれ…巫女の服着てうれしそうにしてさ。バッカみたい!!」 ――フラン鬱(?)エンド―― 「魔理沙さんの帽子でも借りてきましょうか?」 「……知らないっ!!」