枷、咎、覺、盟              全ては遠き夢の跡。募らせ満ちしは幾星霜、あるいはその零落の果て。  何を思うか彷徨の民。  いまさら斯様な欠片を集めて何とするか。      男はひたすらにかき集める。自らに、過去より贈られた思いを刻みつけるために。  なにも知らなかったが故に最後まで知りえず、ついに散っていった過去を弔うために。  ああ、無意味と知りながら。けじめと称して傷を負う。  と、ここで気づかれたのだろう。男は口を開き、こう言った。    「前を向いて、やらなければならない。それが覚悟の証であるからには。   どれだけ薄い希望であれ追わねばいけない。それは私の誓いであるのだから。   呪いだとも。これは呪いだ。   夢の似姿を追う様はさぞ滑稽だろうさ、だがやるんだ。そうしなければ自らにさえ背くことになる。   そうだろう。お前にも願いの1つや2つ……」    目の前のモノはそう言い放った。      だがそれは関係ない。私は嗤った。夢は無いと一蹴し、背を向け歩き始める。  視ない。視れない。捨てた以上はもう、そんな崇高な希望は抱けない。  感情は鎮圧した。無用の私情は切り捨てた。捨てたからには鉄心を抱くよりほかならないのだから。  実のところ、このような手合いは何度か見てきた。  だが、その心はもう折れ果てていた。だから今回もきっと同じなのだろう。  そう思っていた。だから見捨てた。  私はきっとヒドい奴なのだろう。救えるはずの命を捨てるとなど、以前であれば糾弾されていた。  けれども今は違う。  続く道のために生きていく、ならば取捨選択は必要な沙汰なんだ。  安寧など遠き夢。  ……それでも視るのならば、きっとそれはこういう暖かな夢だったのだろう。  あの日を夢見る二重線。かつてを幻視する虚ろの世界。  弄びは『終わらない箱庭』にて、執念の証明はどこまでも続く。