★プロローグ    ■場面:カズトの家     テロップ≪2010年2月27日――さばな市≫  カズト「兄貴、入るぞー」     カズト、マサトの部屋に入る。     マサトは部屋の奥にある勉強机の前に座っており、カズトからは背中しか見えない。     カズトは部屋の奥に移動し、勉強机の脇にあるベッドに腰掛ける。  カズト「話があるって言ってたけど、何の話なんだ?」     マサト、椅子を回転させてカズトに向き直る。  マサト「話したいのは、俺のことなんだ」  カズト「兄貴の?」  マサト「ああ。俺の、昔の話だ。もう7年も前になる」  カズト「7年前ってことは、兄貴は10歳、小学5年生で、俺はまだ4歳か。物心がついてたような、無      かったような」  マサト「どちらにせよ、お前は知らないだろうさ。これからする話は、誰にも話したことはないからな」  カズト「ふーん。で、何をやらかしたんだよ、兄貴」  マサト「(うつむいて)俺は……GFコマンダーだった」  カズト「(反射的に立ち上がって)なっ! ……そんなの聞いてないぞ! いや、そもそもガチャフォー      スの先輩達以外に、GFコマンダーがいたなんて、聞いたことがない!」  マサト「いたのさ。何故か今では、ガチャフォースのメンバー以外は、誰もいなかったことにされている      けどな。……だがまぁ、それは仕方無い。あいつらは特別だ」  カズト「でっ、でもさ! 何で今それを打ち明けるんだよ? 兄貴は俺に、何が言いたいんだ?」  マサト「まぁ、聞けよ。これから人工ガチャボーグのコマンダーになるお前にとって、きっと必要な話だ      からな」 ★1話前半    ■場面:さばな町の山中、夕方     テロップ≪2003年9月1日――さばな町≫     瀕死のクローロボを抱いたマサト、木々の間を走る。     その後ろをデスボーグ・シグマが5機、追いかけてくる。     マサト、腕の中のクローロボを見やる。  マサト「ノア、もう少し頑張ってくれ! もうすぐ、あいつらを振りきれる!」   ノア「マサト……僕は、もう助からない。傷がデータクリスタルに達してる。デスフォースの狙いは僕だ。      僕を置いて逃げるんだ。そうすれば、マサトは助かる」  マサト「馬鹿な事を言うなよ! ノアを置いていけるわけないだろ! (顔を上げて)……ん? あれは?」     マサトの進行方向から、アナザーカラーのデスボーグ・シグマが飛来する。  マサト「挟み撃ちにする気か!? ……いや、前にいるのは1体だけだ。このまま走りぬけてやる!」     アナザーカラーのデスボーグ・シグマは、マサトの頭上を通りぬけ、後方のデスフォースの方へ飛ん     でいく。  マサト「後ろの奴らと合流する気か? だったら好都合だ、一緒に振り切ってやる!」     そのまま木々の間を走りぬけていくマサト。     デスボーグ・シグマ達を振り切り、森の奥に消えていく。    ■場面:さばな町の山中、木々の生えていない広場     マサト、ノアを地面に横たえる。     ノアの体は消滅が始まっており、すでに両足が消滅している。  マサト「(悲しそうに)ノア……」   ノア「……どうやら、ここでお別れのようだね」  マサト「(泣きそうな顔で)そんな……せっかく仲良くなれたばかりなのに……」   ノア「マサト……ありがとう。僕は君に会えたおかげで、ガチャボーグと人間を守るために、戦うことが      できた。メガボーグ星では、臆病で逃げてばかりだった僕が、やっと戦えたんだよ」  マサト「ノア……嫌だ、消えないでくれ」   ノア「これで、メガボーグ星で散った仲間たちのところへ、胸を張って行くことが……」     ノア、消滅が全身に広がり、完全に消える。  マサト「(喉から絞り出すように)ノア……っ!」     アナザーカラーのデスボーグ・シグマ、マサトの背後に現れる。  シグマ「……ここにいたのか。デスボーグ達は全滅させた。もう、街へ戻っても大丈夫だ」     マサト、いきなりシグマに殴りかかる。     シグマ、素早く反応して上昇し、それを回避する。  マサト「(激昂して)何なんだよ、お前! 味方のフリをするな! ノアを殺した敵のくせに!」  シグマ「待ってくれ、話を聞いて欲しい。俺は敵じゃないんだ」  マサト「そんなの信じられるか! お前と同じ姿をした奴に、ノアは殺されたんだぞ!」  シグマ「落ち着いてくれ。とにかく、俺の話を聞いて欲しいんだ。俺の目指すものは、君のパートナーボー      グと同じだ」  マサト「ノアと同じだって!? デスボーグのお前がか?」  シグマ「そうだ。俺は人間とガチャボーグを守るために、デスフォースと戦っている。だからこそ、さっき      君とすれ違ったときに、俺は撃たなかった。」  マサト「(声量を落として)……僕たちを助けたってことか?」  シグマ「ああ。それに、そもそも話ができるデスボーグがいるなんて、おかしいと思わないか?」      マサト、ハッとする。     マサトの回想〜     ■場面:マサトの部屋   ノア「デスボーグは、デスフォースの兵隊なんだ。彼らは自分の意思を持たないし、言葉を話すこともで      きない」     〜マサトの回想、終了。     ■場面:さばな町の山中、木々の生えていない広場  マサト「そうだ……。ノアが、そう言ってた……」     マサト、拳を引っ込める。  シグマ「俺の姿は、見ての通りデスボーグだ。だけど他のデスボーグと違って、自分の意思を持っている」  マサト「どうして、お前だけが?」  シグマ「他のデスボーグには、核となるデータクリスタルが1個しかない。でも俺には、2つのデータクリ      スタルが入っている。意思を持っているのはそのせいだ。その意思に従って、人間とガチャボーグ      を守るために、デスフォースと戦っている」  マサト「意思があるからって、何でデスボーグがデスフォースを裏切るんだ? デスフォースに味方したっ      て、おかしくないじゃないか」  シグマ「それは……」      突如、ビームと爆発の音が聞こえてくる。      マサトとシグマは、話を打ち切り、そちらに向かう。 ★1話後半     ■場面:さばな町の山中、木々の生えていない下り坂     坂の上に立つマサト。坂の下に見えるのは戦闘中のコマンドガール。     すでに被弾しているのか、スーツのあちこちが黒く汚れている。     コマンドガールはデスボーグ・ラムダ4体に襲われている。  マサト「危ない! 助けなきゃ!」     助けに向かおうと、走るマサト。  シグマ「俺が先に行く! 君はコマンドガールの方を!」     シグマはマサトを追い抜き、マサトよりも先に、戦場に向かっていく。     シグマはデスボーグラムダの中に飛び込んでいき、コマンドガールの援護を始める。     シグマがデスボーグ・ラムダにビームを当て、1機落とす。  マサト「(坂の下を見ながら)あいつはデスフォースの味方なんかじゃない。理由は分からないけど、本当      にデスフォースと戦っているんだ……」     ■場面:坂の下  コマガ「(シグマを見ながら)デスボーグが、仲間割れですって!? ……何でもいい、好都合だわ!」     コマンドガール、右腕のビーム砲からバスターレーザーを2発放ち、ラムダを2機落とす。     最後の1機は、シグマが剣で仕留める。  コマガ「最後はあいつを!」     コマンドガール、続けてシグマにもバスターレーザーを撃とうとする。  マサト「だめだ! 撃たないでくれ!」     坂を駆け下りてきたマサト、バスターレーザーの射線に入って、発射を邪魔する。  コマガ「(驚いた様子で)何やってるのよ! どきなさい!」  マサト「あいつはデスフォースの味方なんかじゃない! 自分の意思で、人間とガチャボーグを守ろうとし      ているんだ!」  コマガ「デスボーグに意思なんかないわ!」  マサト「あいつは違うんだ。君のことだって、助けたじゃないか」  コマガ「そうだとしても、仲間を奪ったデスフォースを、私は許さない!」  マサト「(決断した声で)……あいつと俺だって仲間さ! あいつは俺のパートナーなんだ!」  コマガ「(信じられないという声で)……パートナー? デスボーグの、あいつと?」  マサト「そうだ! だから、撃たないでくれ!」     コマガ、しばらくマサトの目を直視した後、ゆっくり銃を下ろす。  コマガ「……わかった、今回だけ見逃してあげる」  マサト「(安堵したように)……ありがとう」     シグマ、マサトのそばに降りてくる。  シグマ「彼女は無事か?」  マサト「……ああ、大丈夫だよ」  コマガ「(驚いた様子で)……まさか、言葉を話せるデスボーグがいるなんて……」  シグマ「俺は、他の連中とは違う。生まれた場所は同じだが、デスフォースとは敵同士なんだ」  コマガ「そう……。確かにあなたは、ちょっと違うみたいね」  マサト「分かってくれたの?」  コマガ「(首を振って)いいえ。今日は助けられたけど、それでもやっぱり、私はデスボーグを許せないわ」      コマガ、森の奥に歩き去る。  レイン「私はレイン。借りた恩は必ず返す。でも、それは人間のあなたに対してだけよ。デスボーグに返す      物は、恨みしか持ってないわ」      レイン、身をひるがえし、木々の間へ消える。      シグマ、マサトの正面に回る。  シグマ「……彼女は俺を撃とうとしていた。君はどうやって、彼女を説得したんだ?」  マサト「撃たないでくれって頼んだだけだよ。(照れくさそうに)あいつは俺のパートナーだからって」  シグマ「(感動したように)パートナー……!」  マサト「改めてお願いするよ。僕はマサト。良かったら、僕のパートナーボーグになってくれないか?       一緒に、人間とガチャボーグを守るために戦おう」  シグマ「ああ! 喜んで!」      マサト、顔に夕陽の光が差してきて、手で目を覆いながらそちらを見やる。      その先で、黒い影がいくつも飛びまわり、ビームの光が飛び交っているのが、目に入る。  マサト「誰かが戦ってる」  シグマ「行こうか、マサト」  マサト「ああ、行こう。ええと……」  シグマ「シグマでいい。こんな身なんだ、名前にはこだわらないさ」  マサト「じゃあ、シグマ! 行こう!」  シグマ「ああ!」      山道をかけるマサトとシグマ。  マサト(ノア……人間とガチャボーグを守りたいという、君の思い。僕が受け継ぐよ。      同じ思いを持った、シグマと、一緒に……!)