『仲直りの秘密』     ジャングル公園。     砂山の上をデスボーグ・ラムダが逃げるように飛んでいくが、ビームガンによって撃墜され、     地に落ちて消滅する。     公園にいるのはコウ・Gレッド・うさぎ・ケイ。     デスフォースを全滅させて喜んでいると思いきや、いきなり口論を始める。   コウ「うしろから撃つなって、この前も言っただろ!」  うさぎ「いきなり前に飛び出す方がいけないんでしょ!」     Gレッドとケイは階段の上に並んでいる。こちらは冷静だ。 Gレッド「(なだめるように)コウ、戦っていればどうしても起こることなんだ。私は気にしていない」   ケイ「こんなことでいがみ合ったって、何にもならないわよ?」     コウとうさぎ、パートナーの言葉に耳を貸さず口論を続ける。  うさぎ「わかった! もうコウとは絶対に組まないから!」   コウ「いいぜ、あとで泣いたって知らないからな!」     Gレッドとケイ、そろってプンとそっぽを向く2人を前にして、ため息をつく。     オープニング(戦え! ガチャフォース)     タイトル『仲直りの秘密』     翌日の朝、うさぎの部屋。     鏡台の前に座って髪をとかしているうさぎに、台の上にいるケイが話しかける。   ケイ「あんなこといっちゃってどうするの? コウ君とはさっさと仲直りした方がいいわよ?」  うさぎ「(ムッとして)何よそれ! あいつが謝ってきたって許してあげないんだから!」     ケイ、くすりと笑って、   ケイ「ほらほら、意地を張らないの」  うさぎ「意地なんて張ってない!」     うさぎ、くしを鏡台の上に放り投げ、立ち上がる。     ベッドの上に置いてあった帽子とランドセルを取り、身に付けながら部屋を出て行く。   ケイ「あら、私はお留守番なの?」  うさぎ「(頭だけ部屋にのぞかせて)ふーんだ! ケイなんて知らない!」     うさぎの足音が遠ざかり、玄関のドアを開ける音がする。     ケイ、鏡台の上から窓のそばまでジャンプし、わずかに開いていた窓から外に飛び出していく。     百十小学校、給食の時間。     さっさと給食を片付けた男子が数人、教室の外へ駆け出していく。その最後尾にサッカーボールを     持ったコウが続き、教室から出ようとするが、ドアのところで立ち止まって振り向く。     その先にはうさぎとマナ。     うさぎとマナは同じ班で、机をならべて給食を食べている。マナはまだ半分くらいしか食べていない     が、うさぎはいつも男子といっしょに出て行く習慣のせいか、すでに食べ終えていた。   マナ「うさぎちゃん、コウ君が待ってるよ?」     言われて、一瞬コウの方を向いてしまううさぎ。     コウと目が合って、コウは仲直りできるのだと思い、表情を明るくする。     しかし、うさぎはすぐにそっぽを向いてしまう。   コウ「(小声で)なんだよ…!」     うさぎから視線をそらし、教室の外に去っていくコウ。   マナ「うさぎちゃん……?」     マナ、状況が飲み込めず、うさぎにきょとんとした顔を向ける。     百十小学校の屋上、昼休み。     マナ、フェンス越しに校庭の様子を見る。コウ達がサッカーをしているが、うさぎの姿はない。   マナ「(心配そうに)やっぱりいない…。ねえ、うさぎちゃんとコウ君、何かあったの?」     マナが振り向く。カケル、サスケ、Gレッド、ケイがいる。      ケイ「ちょっとしたケンカよ。コウ君と組んでデスフォースと戦ってるときに、アサルトライフルの弾が      Gレッドに当っちゃってね。私とGレッドは気にしてないんだけど、コウ君が怒っちゃって」 Gレッド「それから2人が口論を始めてしまって、現状に至る…というわけなんだ」   マナ「さっきの様子だと、コウ君のほうは仲直りしたいように見えたけど…」   ケイ「うさぎは意地っ張りだから、なかなか素直に謝ろうとはしないでしょうし、コウ君から謝ってきた      って許さないでしょうね」   ナオ「でもそれじゃあ、デスフォースが来たときに1人で戦わなくちゃいけなくなるわよ? うさぎちゃ      んと家が近いのって、コウ君だけでしょう?」   ケイ「(うなづいて)その通りよ。Gレッドなしでデスフォースと戦うなんて、冗談じゃないわ」     短い沈黙。それを今まで黙っていたカケルが破る。  カケル「だったら、僕に考えがあるよ」   マナ「(身を乗り出して)ホントに!?」  カケル「うん、だけど……」     カケル、ケイを見つめたまま言葉を止めてしまう。     ケイ、その視線に気付いて、   ケイ「あら? もしかしてちょっとアブないことなの?」     カケル、申しわけなさそうにケイから視線をそらしたあと、うなづく。   ケイ「(微笑して)大丈夫よ。こう見えても私、プロなのよ?」     ガチャボーグ入手画面風のアイキャッチ。     ガチャボックスの光から、うさぎとケイの一枚絵が出現する。     放課後、1人で帰り道を行くうさぎ。ランドセルの中にはケイが入っている。  うさぎ「(いらいらして)勝手に来ちゃうなんて、信じらんない!」   ケイ「(平然と)カワイイうさぎちゃんのことが心配だったのよ」  うさぎ「心配なんかしなくていいの! 私ひとりで困ることなんて、何にもないんだから!」     うさぎ、憤然としながら人通りのない通りに入る。それを前方の建物の陰からキツネが見ていた。     キツネ、いちど身をひるがえすと、地べたに座っているネコベーに報告する。  キツネ「下駄箱に入ってた手紙通りです。あいつ、今日はひとりですよ」     ネコベー、いちどニヤリと笑ってから立ち上がる。 ネコベー「ガチャボーグゲットの大チャンスだ。キツネ、ヘマすんなよ」     キツネ、ひひと笑いながらネコべーのあとにくっついて、通りに姿を見せる。     ネコべーとキツネに道をふさがれ、足を止めるうさぎ。 ネコベー「こんにちは、うさぎちゃん」  うさぎ「(きっ、とにらみつけて)なんの用? こっちはイライラしてんの!」 ネコベー「そう恐い顔しないでよ。俺たちはただガチャボーグが欲しいだけなんだ」  キツネ「(笑いながら)そうそう、ガチャボーグだけ置いていってくれりゃ、帰してやるよ」  うさぎ「ガタガタ抜かしてんじゃないわよ! ケイ、いくわよ!」     ケイ、ランドセル側面の隙間から、身軽におどり出る。     うさぎ、「コウはアイザックの方を…」と言いながら右を向いたが、誰もいない。     一瞬のあいだそのままの姿勢で固まっていたうさぎだが、すぐに険しい顔で正面を向く。  キツネ「2対1じゃ勝てないから、置いていけって言ったのに…」 ネコベー「どうやら痛い目を見たいようだな」     キツネとネコベー、うさぎへ一歩詰め寄る。     うさぎ、おもわず後ずさってしまう。     コウ、その通りに入ろうとしたところで、立ち止まる。   コウ「あいつら、何やってんだ…?」     コウからは、楽しげな表情のネコベーとキツネ、うさぎの後ろ姿が見える。     コウがもう少し下に目をやると、ほとんど一方的にやられているケイの姿があった。   コウ「うさぎのやつ、まさかひとりで…!」 Gレッド「コウ、ふたりを助けよう!」     しかしコウは道を逆戻りして、通りから出てしまう。     コウの脳裏には、給食時間のうさぎの姿がよみがえっていた。   コウ「あのとき仲直りできたのに、うさぎのやつがしなかったから…!」 Gレッド「コウ、うさぎとケイを見捨てるのか!?」   コウ「うるさいな! ひとりで行きゃいいだろ!?」 Gレッド「(小声で)……見損なったぞ、コウ」     Gレッド、ブースターを全開にしてうさぎの方へ向かっていく。     コウはその場でしゃがみこみ、動こうとしない。 ネコベー「それもらいィ!」     ヴラドの剣がケイのわき腹を薙ぎ、エネルギーを吸収する。     ケイ、いよいよエネルギーが底をつき始め、動けなくなる。  キツネ「へっへっへ、それじゃこいつは貰っていくぜ」     アイザック、ケイに近づき、ケイを肩にかつぐ。   ケイ「(消えそうな声で)うさぎ…」  うさぎ「(青ざめた顔で)ケイ…そんな…」     そのとき、飛び込んできたGレッドがアイザックの顔面を殴り飛ばす。     アイザック、ケイを落として後ろに倒れる。 Gレッド「大丈夫か、ふたりとも!?」   ケイ「(弱々しく)なんとかね……」     Gレッド、うさぎからの返事がないことに気付き、うさぎを見やる。     うさぎ、目を潤ませながら振り向く。しかしコウの姿はそこにない。 Gレッド「(うさぎの背中に向かって)コウは…来ていない」     うさぎ、そのままぺたんと地面に座り込む。口元を歪ませ、目からは涙を流す。  うさぎ「(涙声で)コウ……わたし、あやまるから……どれだけでもあやまるから……」     ネコベーとキツネのやりとりが聞こえてくる。     が、うさぎの耳には聞こえていない。 ネコベー「何だ、テメェもひとりかよ」  キツネ「猫部さん、ついでにこいつも貰っちまいましょうよ」     うさぎ、大声で叫ぶ。  うさぎ「私のそばにいてよ!! コウ!!」     うさぎ、近づいてくる足音に気付き、そちらを見やる。     コウ、うさぎに向かって歩みを進める。   コウ「ごめんな、うさぎ。ひとりにさせちまって」     コウ、うさぎの前で歩みを止め、ネコベー達にむかって話す。   コウ「うさぎにもケイにも、もう手は出させねえ。Gレッド、俺たちの力を見せてやろうぜ!」 Gレッド「(嬉しそうに)ああ!」     Gレッド、バーストの光に包まれる。 ネコベー「(冷静に)キツネ」  キツネ「はい、猫部さん」     ヴラド、アイザック共にバーストを使う。 ネコベー「いくらお前が強かろうが、2対1で勝てるわけねぇだろ」  キツネ「そうそう、あきらめたほうが身のためだぜ?」     ふいに、ネコベー達のうしろから声がかかる。  カケル「2対3だよ、残念だけどね」     ネコベーとキツネ、ふりむく。     カケル、サスケ、マナ、ナオがいる。  カケル「(穏やかに)君たちこそ今のうちに退いた方がいいよ。ケイを治療したなら、今度は2対4になっ      ちゃうからね」     キツネ、ネコベーに目くばせして、  キツネ「ね、猫部さん…」 ネコベー「わ、わかってる! 行くぞ!」     ネコベーとキツネ、パートナーを拾い上げてから走り去る。     ナオ、ケイに近づいて回復処置をほどこす。   ケイ「ありがとう、ナオ。楽になったわ」     うさぎ、ケイを抱き上げる。  うさぎ「(涙目で)ケイ…ごめんね。私が意地を張ったりしなかったら、ケガなんかしなくてよかったのに…!」   ケイ「ふふ、やっと素直になったわね」     ケイ、うさぎの鼻先を指ではじく。   ケイ「もう、ケンカなんかしちゃダメよ?」  うさぎ「(ほほえみを見せて)うん…わかった」     うさぎ、コウの方を向いて、  うさぎ「ごめんね、コウ。あのとき、仲直りしようとしてくれたのに…」   コウ「いいよ、そんなこと。それより俺の方こそゴメン。もっと早く、お前とケイを助けられたのに…」     コウとうさぎ、視線を合わせる。     ふたりの右手がおもむろに差し出され、握手を交わす。   コウ「(明るい表情で)これで仲直りだな」  うさぎ「(笑顔で)うん!」     うさぎの左手の中にいるケイ、カケルとマナの方へ、こっそりとウインクを飛ばす。     カケルとマナがそれに微笑みかえして――。     エンディング(Shining World)