《見るな》       written by unknown 4月1日 今日は引越し。奉公に来たのはいいけど、 パルミアの街はとても大きくて、迷ってし まった。昼間は忙しくて何も考えるヒマが 無かったけど、お母さん達は元気にしてい るだろうか。とても心配。 私は……うん、ちょっと不安もあるけど、 この街で頑張るって決めたから、大丈夫! 5月14日 仕事には慣れてきたけど、周りの人達と話 が合わない。みんな都会育ちでキレイだか ら、私みたいな田舎者は気後れしてしまう。 なんか寂しい。 5月23日 今日は何てことない日だった 6月25日 今日は何てことない日だった。 7月25日 今日はお給料日だった。それに、私の誕生 日。誰もお祝いなんてしてくれないけど、 お菓子を買ってきた。 8月7日 お店で男の人に声をかけられた。あの人も 冒険者なのかな。他の冒険者と違って、人 当たりのいい人だったな。 8月8日 今日もあの人に声をかけられた。 Lさんって言う名前らしい。 Lさんはやっぱり冒険者だった。 長々話していたら店長に怒られたけど、 Lさんが庇ってくれた。 それに、棚出しの荷物まで持ってくれた。 優しい顔しているけど、力を入れた時に 見えた腕の筋肉とか、やっぱり鍛えてい るんだなって思った。 8月13日 Lさんが店に来た。買っていくのはいつも クリムエール一本だけ。寝酒にしているら しいけど、あまり飲みすぎないで欲しい。 8月15日 Lさんはパルミアじゃなくてヴェルニース にお家を持っているみたい。パルミアには 護衛のついでに立ち寄って、しばらくここ を拠点にして冒険するらしい。 Lさんのお家か……どんなとこなんだろ? 8月24日 今日はLさんが店に来なかった。 8月30日 今日もLさんが店に来なかった。もう別の 街へ行ってしまったんだろうか。 少し寂しい……。 9月4日 Lさんが店に来た!両手に抱えきれないほ どの武具を抱えて扉を開けたLさん、 本当に嬉しそうだったなぁ。 店長が買取査定をしている時に話を聴いた ら、近くのネフィアに泊り込みで潜ってい たらしい。それならそうと一声かけてくれ ればいいのに! 9月11日 Lさんが店に来た。いつものお酒の他に、 ポーション類も買い込んでいった。また ネフィアに潜りに行くらしい。 大丈夫だよ、なんて言いながら笑ってた けど、やっぱり心配だ。 ……Lさんが無事に帰ってきますように! 9月12日 神様神様神様 神様神様神様神様神様神様神様 神様神様神様神様神様神様 Lさんを助けて! 9月13日 Lさんが店に来て、ビックリした。 片腕に包帯をしてたけど、元気そうで本当 に安心して涙が出た。人前で泣いたのなん て何年ぶりだろう……。恥ずかしい。 Lさんも困った顔してたな……。明日にで も謝っておかないと……。 でも、昨日、Lさんが怪我をしたと聞いた 時は気がどうにかなりそうだった。大した 怪我じゃなくて本当に良かった。 9月19日 Lさんが店に来て、他愛もない話をした。 それだけで幸せな気持ちになれた。 ……私は、Lさんが、好きだ。 9月30日 Lさんに食事に誘われた。どんな格好を していけばいいんだろう……。 Lさんはいつも通りで良いって言ってく れたけど、私は可愛くないから、Lさん に恥をかかせてしまうかも知れない。 それでも、Lさんと一緒に居たい。 10月4日 昨日はLさんと食事だった。まるで夢の 中にいるみたいで、変な事を言っていな かったか、とても心配。 そう言えば、Lさんから色々なお話を聴 かせてもらった。Lさんは冒険者だけど 実はあまり冒険が好きじゃないらしい。 冒険をすると、どうしても獣や人と戦う ことになるから、それが嫌だと言ってい た。優しいLさんらしい。 お金が溜まったら、Lさんは小さな畑と 牧場を買って、のんびり生活したいと考 えているそうだ。 ……その時、私がLさんの隣に居れたら どんなに幸せだろう。 Lさん……。 10月27日 Lさんと結ばれた。 本当に夢みたい。 11月4日 今日、Lさんがネフィアに出発した。 彼が無事に帰ってこられますように。 神様、彼を守ってください。 11月7日 彼が無事に帰ってきた。嬉しそうな笑顔 で私を抱きしめてくれた。 前に話してくれた夢が叶うまで後少しだと 言っていた。私も何か手伝いたい。 正直な話、彼が危ない冒険に出かけるのは 本当に心配だし、優しい彼が冒険を続けて いるのも間違っていると思う。 何とかならないだろうか。 明日、店長に相談してみよう。 11月9日 彼はいつも私を驚かせてくれる。 茶目っ気のある笑顔を浮かべて、種明かし をするように、彼が見せた家の権利書。 居住予定人数が『2人』になっていた。 嬉しくて嬉しくて、また泣いてしまった。 ルミエストの近くにある、小さな家。 私達二人の新しい家。 彼と二人で過ごせる日々が待ち遠しい。 11月14日 彼はなんでも一人で背負い込みすぎだと思 う。畑の権利書が思ったよりも高く、当初 の資金では買えないと悩んでいたそうだ。 ここ数日、彼の表情が暗かった理由がよう やく分かった。 彼はまたネフィアに行こうとしている。 何とかして止めなきゃ。彼には危ない真似 はして欲しくない。 11月15日 足りない金額はかなりの物だった。 100,000goldなんて、とてもすぐには用意 できる金額じゃない。 でも、以前、店長に相談したら、退職する 時にはまとまった金額が貰えるらしい。 それと、私の貯金と、今ある家財を売り払 えば何とか手が届く金額だ。 明日、彼と相談してみよう。 11月17日 彼がやっと折れてくれた。彼の気持ちも分 かるけど、二人の新居で、二人の夢なんだ から、私も協力したい。 彼の夢は、もう私の夢でもあるんだ。 そう言った時、彼が抱きしめてくれた。 私は本当に幸せだ。 これから先も、幸せが続きますように。 11月26日 昨日、退職の手続きが終わって、目標にし ていた金額が溜まった。 彼と二人の新生活に乾杯をした。 彼と二人で愛を確かめ合った。 ついさっき、権利書を購入するために、 彼が大使館へ向かった。 新しい生活にドキドキが止まらない。 田舎からパルミアに来る時は不安でたまら なかったけど、今は彼が傍にいてくれる。 新しい生活が、彼との生活が始まるのが、 待ち遠しくて仕方がない。 11月27日 彼が戻らない 11月28日 彼がもどらない 11月30日 ガードに捜索願を出した。 彼の知り合いにも心当たりを聞いたけど、 彼の事を知っている人は誰もいなかった。 冒険者仲間にも話を聞こうと思ったけど、 もう全員、別の街へ移ったらしい。 12月2日 大使館に問い合わせたけれど、彼が権利書 を発行した記録は残っていない。 どういうこと 彼は幻だったの 12月4日 彼が見せてくれた家の権利書。 あの場所へ行ってみよう。 もうお金もない。 歩いていくには厳しいかもしれないけど、 それでも行ってみたい。 12月6日 さむい 12月9日 権利書に書かれていた場所へ行ってみた。 何もない原っぱだった。 私はだまされていたんだ。 12月10日 街を行く人がみんな私を見ている。 水にうつった私は、きたなかった。 まるで彼にきいた「がき」みたいだ。 12が     かれを見つけた   おいかけたら けられた  まちの みんな  見ていた     みんな かれの かおだ      見ないで        見ないで            見ないで 121212121212111111111111111 見ないで見ないで見ないで見ないで 見ないで見ないで見ないで 見ないで見ないで見ないで 見ないで見ないで見ないで 見ないで見ないで 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな 見るな見るな見るな見るな見るな見るな         見               た   な