どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z001703       担当:外川辛 ――――――――――――――――――――――― 「……おい、雅広さんよ」  投げかけられたその声はひどく陰鬱な響きを帯びていて、顔を見ずとも声の主がどういう表情をしているかは容易に想像できる。だから、彼――高波雅広[たかなみ・まさひろ]は素知らぬふりの笑顔を浮かべて振り返った。 「どうかしましたか、イェリさん?」  白々しくそう口にすると、もともとしかめっ面だった男が更に面倒くさそうな表情を浮かべた。刺すような恨みがましい視線が突き刺さる。 「お前さん、俺を殺したいのかね」  そうぼやいて、金髪の男は心底嫌そうに肩を竦めた。男の名はイェリ・サルミ[−・−]、雅広が率いるユニオン『紅き牙』の中でも最古参の一員だ。  初代団長にして実兄である高波雅辰[たかなみ。まさたつ]が唐突に団長の座を辞して紅き牙を去って以来、後を継いだ雅広は組織の改革に心血を注いできた。喧嘩っ早く後先を考えずに短絡的な行動を取るよう個人の集まりではなく、もっとスマートにチームワークに乗っ取った行動ができる集団に……という雅広の理想は、多くのメンバーとの価値観の差により未だ実現していない。  簡単に言えば、ドラゴンを見たら一旦退いて作戦を練るよりもとりあえず殴りかかる、という脳味噌が筋肉でできているのかという人物が構成員に多すぎるというわけだ。  意思伝達がうまくいかないストレスで円形脱毛症になりそうな雅広にとって、イェリは数少ない【常識的な】理解者のひとりである。そのイェリが露骨に不満を表明している原因は他ならぬ雅広の発した指示にあった。 「碧を頭に据えるってのはどういうつもりだ? あいつに任せたら本来の目的そっちのけになるのは目に見えてるはずだろう」  クリムヒルト・ラボラトリーから寄せられた一件の依頼。近頃都内を中心に発生している疫病と思われる現象を調査するため、周囲で活動の確認されているドラゴンの掃討を願いたいというその依頼に、雅広は紅き牙の中でも実力者である風見碧[かざみ・みどり]を部隊長として派遣することを決定した。 「イェリさんを除けば、碧はいちばん実戦経験が豊富ですから。人選としては間違っていないはず」 「……その碧だから問題なんだろうが」  ベオウルフとしてずば抜けた実力を持つ碧には、唯一にして重大な欠点がある。見た目は可憐な少女でしかないのだが、その実態はランスを軽々と操りドラゴンと見れば喜んで殴りかかる……筋金入りの脳筋であるという欠点が。  それを制するために、補佐としてイェリを指名したのだが……。 「毎度毎度、あいつが周囲に余計な被害を出さないように気を抜けない俺の立場になってみろ! おまけにその他の脳筋どもの面倒も見ろってか。もうそろそろ俺は胃に穴空きそうだ! 血ィ吐くぞ!」 「それを言ったら僕だって、皆が言うこと聞いてくれなさすぎでそろそろ禿げそうですよ!?」  なんとも言えない空気が流れる。  先に折れたのは雅広だった。 「……やめましょう、僕らが争うのは不毛すぎる」 「……あぁ」 「とにかく、そちらは任せました。僕はこっちで頑張りますからお互い痛み分けです」  胃薬を押しつけ、雅広はそれ以上交渉に応じる気は無いことを示した。 「それにほら、新しく入ってくれた中にいるかもしれないじゃないですか。紅き牙の良心になってくれる常識的な人が!」  ……いるんじゃないかな、いるといいですね、とは言わずにそう付け加える。イェリは変わらずに恨みがましい視線を向けたままだったが、やがて諦めたように大きく溜息をついた。 「あまり酷い奴はもう、斬るからな」  半ば本気に聞こえる調子だった。 「……ああまぁ、治せる範囲でお願いします」 「……面倒くせぇ」  心底だるそうな表情のイェリに、雅広は小さく笑みを浮かべた。 「変わりましたよね、イェリさんは」 「……何が」 「前はもっと、近寄りがたいっていうか……正直、初めて会った時は怖かったです」  今もなお、『史上最強の竜殺し』とも評される高波雅辰の武名に憧れて紅き牙の一員となる者は後を絶たない。古参のメンバーも元は雅辰に惹かれ集まった者が大半だ。だが、イェリもまたかつて無数のドラゴンを血の海に沈めた竜殺しであることを知るものは少ない。 「……さあね。俺も年喰ったから昔みたいな元気は無くしちまったよ。少しはおっさんを大事にしろ」 「そんなこと言って、まだ30過ぎじゃないですか」 「……うるせぇ。気持ちの問題だ」  そううそぶき、イェリは雅広に背を向けた。 「今回だけ期待しておいてやるよ。現れるかもしれない良心様に、な」 ――――――――――――――――――――――― 「マスターより」  こんにちは、お久しぶりですもしくは初めましての外川辛です。  こちらはユニオン『紅き牙』の特定NPCを掘り下げた初期情報になっています。  ユニオン全体の動向を知りたい場合はそのほかの初期情報を参照してください。  今回は基本的にシンプルでストレートなシナリオです。小難しく考えずに頭のネジを少しゆるめてご参加いただくのがちょうどいいと思います。 注意点をひとつだけ。  当シナリオでは、NPCと以前からの親しい友人、幼なじみだった、という設定(特別な間柄の設定)は不採用とさせていただきます(自称するのは自由です)。  自由選択スキル「6301 紅き牙との繋がり」は、もちろん有効ですが、個人的な関係を深めたい場合は純粋にアクションで勝負してくださいませ。    ユニオン本部でしかできない行動を取りたい場合は、その他の自由行動の行動選択肢をお選びください。 ――――――――――――――――――――――― ■関連行動選択肢 A011800 風見隊の一員としてドラゴン狩りに参加 (担当:外川辛/地域:117) 備考:風見碧らと協力して調査の障害になるドラゴンを狩ります。所属ユニオンによる参加制限はありません。 A011802 自分が風見隊の良心になる (担当:外川辛/地域:117) 備考:部隊長の風見碧を始めとする面々の暴走を防ぐ、部隊の良心に立候補したいPCのための選択肢です。自分が選択肢の内容に反する行動を取った場合、約一名からの心証が物凄く悪くなります。所属ユニオンによる参加制限はありません。 X019900 その他の自由行動 (担当:???/地域:???) 備考:既存のシナリオや行動選択肢などの枠にとらわれないアクションに挑戦したい、超上級者向けの行動選択肢です。自分の意志で世界を、物語を作っていきたいというコアでディープなプレイヤーにお薦めです。  ただしアクションが採用されなかった場合は一切描写されず、不採用アクション用のリアクションが送付されます。  すでに存在する行動選択肢で事足りる内容と判断されるアクションをこの行動選択肢に送った場合は、それだけで不採用になります。  また必ず行動する地域番号を記入ください。行動する地域によって、採用率は変わります。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――