どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z001308      担当:菅野紳士 ―――――――――――――――――――――――  【あなた】にとって銃とは、とても身近な存在だった。  子どものころ、父親に買ってもらった玩具の鉄砲から始まり、射撃競技のビームピストル、曲撃ちや早撃ちのコンテスト。  誰より身近なコーチであった父から学んだ銃の腕前は、ベオウルフとなった今では、どんなものにも勝る【あなた】の誇りだった。  今になって思えば、我が家では代々、ベオウルフとしての使命を密かに引き継いでいたのかもしれない。  父は祖父から銃を学び、祖父は曽祖父から銃を学んだ。そうやって、いつドラゴンが現れても大丈夫なように、備えていたのだと。  もっともそれが本当なのかを確かめる術は、今となっては残っていないのだが……。  【あなた】は父の名が刻まれた墓の前に立っていた。  他に人の姿はない。草木のざわめきだけが聞こえる静かな墓地。 「今だに信じられません。まさか、あなたほどのベオウルフが死ぬことになるなんて」  【あなた】が呟いても、そこにあるのは沈黙だけ。  足元に視線を落とすと、父が愛用していたトリガー『旧式拳銃』が供えられていた。  この銃で、父は数えきれないほどのドラゴンを倒してきたのだ。  誰にも負けない無敵の早撃ちと、百発百中の精密射撃。  銃の腕に自信を持つ【あなた】でさえ、父には絶対に敵わないと、そう自負していたのだ。  そんな父がドラゴンに殺された。  相手はジェネラル級のドラゴンだったと聞いているが、それ以上の事は何も分かっていない。  なにしろ一流のベオウルフが集まり結成された部隊を、わずか半日で全滅させたほどの相手だったのだ。現場には手がかりはおろか、父の遺体すら残っていなかったそうだ。  この墓石にも、父を表わすものは何もない。  ただ一つの拳銃を除いて。 「あれだけの被害の中で、この銃だけは傷ひとつつかなかったなんて……。あなたにとっては、自分の命よりも大切なものだったのか」  それとも……。  形見の拳銃を手に取った【あなた】の脳裏に蘇ったのは、幼いころの記憶。  【あなた】が、初めて父からこの銃を見せてもらったときのことだった。  銀の装飾が施された年代物の拳銃は、幼い【あなた】には宝石のように美しく見えたものだ。  玩具の鉄砲とは輝きが違う、重さが違う。なにより触れたときに感じた、この銃の背負った使命のようなもの。  人殺しの道具ではなく、平和へ導く役目を果たそうとする決意。そうしたものが、指先からひしひしと伝わってきたのだ。  父はこの銃のことを話してくれた。 「こいつは我が家に代々伝わってきた守り神なんだ。守り神を手にしていいのは、我が家の主だけ。そして主となった者は、それに相応しい力を持っていなければならないんだ」  そう言うと、父は的代わりに木の杭に立てた、空き缶を指差した。  それからゆっくり拳銃に手を添え、得意の早撃ちの構えを取る。  一瞬の沈黙が訪れた直後、一発の銃声が鳴った。  かん!と、軽快な音とともに空き缶が宙を舞った瞬間。それは無数の破片となって四散した。 「えっ!」  これには【あなた】も目を見開いた。  普通、拳銃の銃痕はあんな吹き飛び方をしない。まるでマシンガンの一斉掃射を浴びた痕のようだ。 「なに、今の!」 「“スポットバーストショット”だ。一点を狙い、全ての弾丸を一瞬のうちに発射する、究極の早撃ち技さ」  そう言って、父は空になったリボルバーを見せてくれた。  確かにそこに残弾はない。一発に聞こえた銃声の間に、全ての弾丸を撃ち切ったのだ。 「スポットバーストショットが使えるのは、この銃を手にする資格みたいなものだな。いつかお前にも、俺の代わりを務めてくれる日が来るのを期待しているぜ」  記憶の中の父の手が、【あなた】の頭を優しくなでてくれた。 「あれから父の真似をして何度も錬修したけど、結局、あの技を覚えることはできなかったよ」  形見の拳銃を見つめ、【あなた】は呟く。  結局、最後まで父を超えることはできなかった。  追いかけても追いかけても引き離され、二度と追いつくことはできなかった。 「そんな子どもに、あなたは何を期待しているんだ? 代わりに仇を取れとでも言うのか?」  その問に答えてくれる者はいない。  静かな沈黙の時間が、いつまでも続くばかりだった。  やがて【あなた】は、舌うちをひとつ。静かに肩をすくめる。 「もう一度……。もう一度錬修したら、今度こそあの技を使えるようになるのかな」  そんな風に思った理由は、【あなた】自身にもよく分からなかった。  別に父の仇を取りたいわけではない。  今さら、父を超えたいと思っているわけでもない。  ただ、父の拳銃が語りかけているような気がしてならなかったのだ。  父が果たす事のできなかった、平和な世界を取り戻してくれ、と。 「今はこの銃を手にする資格さえないってのに。なんでそんなことを考えなくちゃいけないのかな」  形見の拳銃をホルスターに収め、【あなた】は墓地を後にする。  全ては果たせるかどうかも分からない大義のために。【あなた】がやるべきことは―― ――――――――――――――――――――――― 「マスターより」  この初期情報はムーヴの紹介用テキストです。各シナリオとは関係しませんので、ご了承ください。 『スポットバーストショット』  相手の急所に一瞬で装填した全ての弾を撃ち込み、大ダメージを与えます。 ■関連行動選択肢 M018800 ムーヴ修得の旅に出る (担当:???/地域番号:???) 備考:ムーヴ修得のための専用の行動選択肢です。一定の確率でムーヴの修得に失敗します。またムーヴをすでに修得している場合、より修得に失敗しやすくなります。  希望するムーヴがある場合は、その名前をアクションシートに記入ください。高い確率で希望のムーヴを修得できます。  なお、無記入や存在しないムーヴ、トリガーの合わないムーヴ名が記入されている場合、修得できるムーヴはランダムとなります。  また、この行動選択肢のリアクションは、基本的に小説形式ではなく、PCの描写はありません。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――