どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z001301      担当:菅野紳士 ――――――――――――――――――――――― 「ねえねえ、そこの君。ベオウルフだね」  とある休日の一幕。  たまにはドラゴン退治を忘れてと思い、町をぶらぶら歩いていた【あなた】を呼び止めたのは、奇妙な格好の中年男性だった。  全身を隠すように覆ったマントと、頭に巻いたターバン。いかにもインチキくさい奇術師といった風貌だ。  妙に開いた口元から覗く歯が、白く光っているものだから、不気味というより滑稽な雰囲気が先行しているように思える。 「なんで、ベオウルフだと分かるんですか?」 「町の中でそんなもの持ち歩いている輩なんて、ベオウルフぐらいしかいないからね」  ターバン男が、【あなた】のトリガーを指差しながら。  休日と言えども、ドラゴンが現われれば戦わなければならない。いかなる時も肌身離さずトリガーを持ち歩くのは、【あなた】の習慣なのだ。  刃渡りが短く、腰に下げても邪魔にならないカットラスは、そう言う意味で何かと便利な代物なのだが……。  どうやら今回の場合は、それが奇人に目を付けられる原因となってしまったらしい。 「うむ、いいねぇ。トリガーも私と同じカットラス。好都合だねぇ。なにより、その闘志を秘めた力強い瞳。私の技を伝授するには、この上なく最適だ」  【あなた】のトリガーをしげしげと眺めるターバン男の様子に、思わず肩をすくめる。  あまりこういう輩とは関わりたくない……。 「すいませんが、急いでいるので」  【あなた】が足早にその場を立ち去ろうとすると、ターバン男はすぐにその後をついてきた。 「待ちなさいって。もう少し私の話を聞きいてよ」 「嫌です。貴重な時間を、こんなことで潰したくないので」 「まあまあ、そう言わずに。君もベオウルフだ、“ムーヴ”には興味があるだろう?」  その言葉を耳にして、【あなた】は立ち止まる。  ムーヴとは、修練を積んだベオウルフだけが使えるようになるとされる奥儀のことだ。  肉体を覚醒させ瞬間的に力を引き出すようなものもあれば、魔法のような超常現象を起こすものもあるとか。いずれにしても、一撃でドラゴンを葬り去るほどの威力があると言われている。  もちろん、そんな力が本当にあるというのであれば、【あなた】も興味がないと言えば嘘になる。 「ムーヴがなんだって?」  独り言をつぶやくように、声をひそめる【あなた】に対して、ターバン男は唇の端を小さく歪めた。 「とりあえず町中で、武器を振り回すわけにいかないからね。少し場所を移そうか」  ターバン男に連れられて【あなた】がやってきたのは、廃墟となったビルの中だった。  廃ビルの中は薄暗く、当然のこと人の気配はどこにもない。 「ここならいいだろ。ドラゴンに試せればさらにいいんだが、生憎、今日は平和な一日になりそうだしな」  喜ぶべきか、悲しむべきか……。などと言いつつ、ターバン男が胡散臭いはにかみ笑いを見せる。 「さてと、それじゃ始めようか。――とりあえず、君のトリガーをちょっと拝借」  半ば勝手に、【あなた】の腰元からカットラスを掴み取り、抜刀するターバン男。  これには文句の一つでも言ってやろうと思ったのだが、【あなた】は声を発することができなかった。  カットラスを握り、構えを取ったと思うや否や。ターバン男からただならぬ気配が漂ってきたのだ。  あたかも目の前でドラゴンと対峙しているかのような緊迫感。張りつめた空気に、息苦しさを感じてしまう。 「おじさん……?」 「静かに。精神を集中させているのだ」  口数の少なくなったターバン男が、見えないドラゴンに向けて、剣先を突き出す。  そして。 「はあっ!」  ターバン男が気合とともに雄叫びを上げた瞬間。カットラスから炎が噴き上がった。 「!?」  炎は刃を包み込むと、さらに勢いを増していく。薄暗い廃ビルの中が、赤々とした灯りに照らされた。 「これが、ムーヴ……」 「正しくはムーヴの一つ、といったところだね」  ふぅ……と、ターバン男がため息をひとつ。カットラスから炎が消える。  再び辺りが暗がりに変わった。  一瞬の出来事ではあるが、確かに【あなた】は目の当たりにしたのだ。目の前で超常現象とでも呼ぶべき奇跡を。 「今のは『フレイムタン』。カットラスを炎の剣に変え、相手を攻撃する技だ。スピリットをコントロールできるようになれば、ベオウルフはこういう芸当も可能になるのだよ」  元の胡散臭い顔つきに戻ったターバン男が、【あなた】の前にトリガーを差し出す。  確かにそれは【あなた】の愛用するカットラスだった。すり替えや、手品のタネを仕込んだ痕跡など、どこにもない。  手に取ってみると、柄ごしに炎の余熱が伝わってきた。 「私はこの技を受け継いでくれる弟子を探しているのだよ。ベオウルフとしてはもはや体力的に限界なのでね。そろそろ引退したいと思っている」 「それで、声を掛けてきたのですか」 「いくら強力なムーヴであっても、トリガーが異なれば扱えないのでね。君のようにカットラスのトリガーを持つベオウルフである必要があったのだ」  ターバン男の言葉に【あなた】は静かにうなずいた。  『フレイムタン』……。  この技があれば、今まで以上の強さを手に入れることができるかもしれない。  そんなことを思いながら。 「もちろん、強要するつもりはない。ただ君がもし、この技を受け継ぎたいという意思があると言うなら、いつでも私のもとへ来なさい」 「そんなこと。すでに返事は決まっています」  そう言って、【あなた】が告げた言葉は――。 ――――――――――――――――――――――― 「マスターより」  この初期情報はムーヴの紹介用テキストです。各シナリオとは関係しませんので、ご了承ください。 『フレイムタン』  カットラスから炎を発生させ、相手を切りつけてダメージを与える技です。 ■関連行動選択肢 M018800 ムーヴ修得の旅に出る (担当:???/地域番号:???) 備考:ムーヴ修得のための専用の行動選択肢です。一定の確率でムーヴの修得に失敗します。またムーヴをすでに修得している場合、より修得に失敗しやすくなります。  希望するムーヴがある場合は、その名前をアクションシートに記入ください。高い確率で希望のムーヴを修得できます。  なお、無記入や存在しないムーヴ、トリガーの合わないムーヴ名が記入されている場合、修得できるムーヴはランダムとなります。  また、この行動選択肢のリアクションは、基本的に小説形式ではなく、PCの描写はありません。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――