どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z000605       担当:上原聖 ―――――――――――――――――――――――  【きみ】は喜多路町[きたじちょう]に住んでいる。  世界でも有数の資産家である田中兼男[たなか・かねお]町長の下、自衛隊と彼が個人的に雇ったベオウルフ、そして【きみ】のような町民のベオウルフが完璧な守りを築いていた。  そのつもりだった。  カッ!  稲妻が落ちる。 「なっ……なんだあ?」  【きみ】は飛び起きた。  窓から外を見れば、逃げ回る人々、炎に包まれた町。  トリガーを片手に飛び出し、見上げれば、上空を舞う数十頭のドラゴンの群れ。 「馬鹿な!」 「馬鹿も何も現実だ!」  自衛隊員が叫ぶ。 「くそっ、だからあれだけ町長に宝玉を集めるのはやめろって言ったんだ。きっと、あいつらは恨んで来てるんだ!」  避難誘導を始めながら毒づく自衛隊員に、【きみ】は内心で同意した。  研究のためドラゴンの死体を集めるクリームヒルト・ラボラトリーにケチな田中が出資しているのは、ドラゴンの宝玉が目当てだと言う噂があった。  ドラゴンの宝玉とは、竜の体内から取れる宝石のように美しい石のことだ。  元々は宝石コレクターだった田中は、ドラゴニック・アワーの始まりと共に宝玉コレクターへと変貌し、クリームヒルト・ラボラトリーやそのほかのベオウルフから宝玉を高く買い取っている。  もちろん、ドラゴンの恨みを買うのは確実なので、コレクターはベオウルフを個人的に雇えるだけの者に限られる。  事実、町は襲われた。 「町長の雇ったベオウルフは何やってんだよ!」 「屋敷を守るのに手一杯だと!」 「ベオウルフはドラゴンからみんなを守ってくれるんじゃないのか!」  町民の叫びが耳に痛い。  【きみ】自身に町長に雇われている義理がなくても、ベオウルフが町を守りきれていない、その事実だけは確かなのだから。 「消防車! 早く!」 「救急車……くそっ、ドラゴンが道を塞いで通れないだと?!」  【きみ】は炎上する街中を駆け抜け、砲列を並べて一斉射撃している戦車の前に出た。  トリガーを抜き、一閃!  ソルジャードラゴンは怪我を負って舞い上がった。  代わりにコマンダードラゴンが舞い降りてくる。  コマンダーじゃ、【きみ】に勝ち目はない!  だが、コマンダードラゴンは、【きみ】をじろりと睨んだ。 「特別に命は助けてやる。だから町長に言え」 「な……にを」  冷たい汗が背中を伝う。このやり取りに失敗すれば、【きみ】に明日はない。 「……貴様の集めている宝石をもらう。出せばよし、出さなければこの町は焼け野原、貴様自身も腸ぶちまけて死ぬことになると、な」 「砲撃、よーいっ!」  背後から聞こえた声に、【きみ】は慌てた。 「馬鹿ッ、ソルジャーならともかく、コマンダーにトリガー以外の攻撃はッ」 「てーッ!」  戦車が一斉に火を吹く。コマンダードラゴンは、それを全身で受けた。しかし傷一つ負った気配はない。  大きく口を開くと、雷のブレスを発し、戦車を一掃した。 「みんな!」  【きみ】の狼狽振りを嘲笑うかのようにコマンダードラゴンは尾の一撃でビルを叩き壊した。 「さあ行け! 行って町長に伝えるのだ! 我らが主は寛容だ、宝石さえ差し出せばこれ以上手出しはせぬとな!」  コマンダーは翼を広げて舞い上がり、辺り構わず稲妻のブレスを落とす。  【きみ】は回れ右して駆け出した。  町外れの、まだドラゴンの攻撃を受けていない(いや、ドラゴンが宝石を無傷で手に入れるため攻撃を仕掛けていない、か?)町長の屋敷へ駆け込み、かくかくしかじかと説明する。  田中の秘書はすぐに飛び込んでいったが、少しして戻ってきた。 「町長は……宝石と命なら、宝石を優先すると」 「それが町長のやること?! あいつは一人死ねばそれでいいけど、現実に被害を受けてるのは町民なんだよ! その点町長としてどう考えてる!」 「いや……町長はきみも知っての通りの方だから……」  名代のケチ、しみったれ。そして無類のコレクター根性。  それを集めると、田中兼男という男ができる。  ジャッ!  またブレスで町が焼けている。  【きみ】はこれ以上問答する必要を認めず、炎の町へ駆け出した。  ――数時間後。  自衛隊とベオウルフは、ようやくドラゴンの撃退に成功した。  しかし、その代償は大きかった。  町は半壊。火の手は今も残っており、必死の消火活動が進められている。  自衛隊とベオウルフの活躍によって、町民の死者はいなかったが負傷者は甚大。病院は満杯。  ベオウルフの被害も大きかった。ほとんどが戦いで傷つき、しばらくは安静を余儀なくされていた。  残った【きみ】たちは、町外れに召集され、自衛隊と一緒に見張りに着いていた。 「ドケチも青ざめて、クリームヒルト・ラボラトリーに連絡取ったとさ」  ベオウルフの一人が【きみ】に話しかけてきた。 「そりゃそうでしょ。町長として当然――」 「わかってねぇなあ」  ベオウルフは、ニヤリと笑う。 「救援依頼ならとっくの昔に全ユニオンに出した。そん中で特別にクリームヒルトに連絡入れたんだよ」 「……何て?」 「ドラゴンの死体、宝玉以外高く買い取れってさ」 「それって……」 「そ。ベオウルフの報酬、俺たちが倒したドラゴンの死体で払うつもりだぜ。さっすがドケチ、自分の懐痛めずに報酬払って宝玉までゲットするつもりだぜ」  頭がくらくらしてきた。  町長のドケチっぷり、ここまでとは。 「……その救援が来るまでにこっちがやられちゃってるってことは、ないですよね」 「さぁなあ。こればっかりは時の運だからなあ」  【きみ】は星空を見上げてため息をついた。  この町を守る。だけど、あの町長は守れるだろうか? 「シッ」  ベオウルフたちが頭を上げる。  ドラゴンの群れだ。 「町に近づけさせんな! ここで食い止める!」 「おう!」  自衛隊が砲火を並べてドラゴンを引きつけ、ベオウルフがトリガーでドラゴンを倒す。  今はソルジャーだけだが、弱ったところをコマンダーやジェネラルが出てきたら勝ち目はない。  何とか救援が来るまで、自分たちだけで守るしかないのだ。  それが、ドラゴニック・アワーなのだから。 ――――――――――――――――――――――― 「マスターより」  どもども。始めましてもお久しぶりも、こんにちは。上原聖[かみはら・せい]と申します。喜多路町でドラゴン退治をしたい方は、以下の選択肢をお選び下さいまし。 A010600 喜多路町でドラゴン退治 (担当:上原聖/地域:117) 備考:喜多路町町民だと言う方、引っ越して来られた方は、町民となれます。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――