どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z000404       担当:黒川実 ―――――――――――――――――――――――  WBA【世界英雄協会】公式サイトで閲覧できる最新ユニオンリストによれば『ペポペポの会』とは俗称や通称ではなく、正式名称である。  世界の真理を探求する魔術師たちの集いにしてはなんだか間の抜けた名前だなと【きみ】は思う。  この魔術団を創設した初代総帥は、なんでこんな緊張感に欠ける団体名にしたんですかという側近の質問に、爽やかな笑顔で答えたそうだ。 『無駄に半濁音の多い名前って、可愛くないか?』 「――だから、あの方の御言葉を額面どおりに取るのが真理の探究者に向いていないって話なんだよ。諧謔と韜晦は魔術師の嗜み、こんな間抜けな名前になさったのにも深遠な理由があると、察する程度の思慮は必要じゃないの?」  表情だけは嘆かわしげに【きみ】に向かって首を振ったのは、ヨハン[−]という、ドイツ支部から訪れたベオウルフだ。  19の若さでドイツ支部のエースであるヨハンは、ペポペポの会の結成以前から前総帥を師匠と仰ぎ、その薫陶を受けてきた直弟子である。  前総帥が健康上の理由からククルビータ[−]に総帥の座を譲り、消息を断ってから2年が経つのに、ヨハンの崇拝ぶりには全く衰えが見られない。 「そもそも魔術的に言えば“名前”を公にするのは他者に支配を許すことに等しい。だから外向きには気の抜けるような通称を名乗って敵の油断を呼び、存在を表す真の名前を伏せるというのは、偉大なる魔術師として当然で――」  いつものように拳を握り、立ち上がって大演説を始めない理由は、ヨハンと【きみ】たちが幹部から命じられて、イギリス本部の大書庫を整理している真っ最中だからであり、ここで大声をあげた途端、気難しい老司書によって廊下に蹴り出される連中を過去に何人も見てきたからだろう。  大書庫の管理者たちには、第五階梯アデプタスの位階を持つヨハンでさえ頭があがらない。  知識の泉を支配する者は、どんな時代であっても絶大な権力を保持しているものだ。      ◆     ◆     ◆  ヨハンを含めた各支部の幹部連中がペポペポの会本部『かぼちゃ大王の城砦』に集められた理由は、定例幹部会に出席するためである。  ペポペポの会には、その母体となった魔術結社の慣習に従い、各団員の能力や功績によって、七つの位階でランク分けするシステムが存在する。 第一階梯:ニオファイト (道を目指すもの) 第二階梯:セオリカス  (真理を追うもの) 第三階梯:プラクティカス(力を顕すもの) 第四階梯:フィロソファス(真理に触れるもの) 第五階梯:アデプタス  (秘儀を修めるもの)  位階は全部で七つあり、戦場での功績や、会への貢献度によって上昇する。  通常、団員の階梯はニオファイトから始まるが、長く組織にいる団員や、幹部にコネがある団員が、セオリカス、プラクティカスを名乗る場合もある。  幹部会に出席し、ペポペポの会の運営に口を出す資格があるのは第五階梯以上の団員のみ、ユニオン全体から見れば、ほんの一握りの人間が重要事項を決定していることになる。 「――総帥不在が当たり前の幹部会なんぞ、単なるお茶会に過ぎねえよ。派閥抗争やら陰険漫才やら、胸の悪くなる見世物がついてきやがるがな」  荒い口調で吐き捨てたのは、ペポペポの会の創立メンバーでもあり、現在、ユニオンの事務と経理の統括責任者を務めるアーサー[−]だ。  幹部会絡みの徹夜続きのせいか、くすんだ金髪はつやを失い、メガネの奥の明るい緑の瞳はよどみ、くっきりと隈が浮かんでいる。  書類の山に埋もれつつ、それでもティータイムは諦めない生粋の英国人のいれたお茶を口に運んで、ふと【きみ】はククルビータの顔を思い出す。  前総帥の指名により、弱冠14歳でペポペポの会総帥となったククルビータは、最初に一度だけ顔を出したのを最後に、幹部会には出なくなった。 「政治にも経済にも全く無知な小娘がいなくても、何の問題もないと思うけど」  ヨハンは冷たい口調で言い放った。  少女めいた端整な面差しは、そんな表情をするとひどく底意地が悪そうに見えてくる。 「若かろうが女だろうが、ククルビータが俺たちの総帥なのは確かだろうよ。まわりが立てていくべきなんじゃねえのか?」 「僕にとっての総帥は初代のあの方だけだからね」  勝ち誇ったように顎をそらすヨハンに【きみ】は、ククルビータを後継者に選んだのは初代なんだから、それに異を唱えるのと言うのは、初代の選択にケチをつけることにならないのかと訊ねてみた。  ヨハンは愕然と目を見開き、以後、無言でお茶とお菓子に集中し始める。  アーサーはため息をついてメガネを拭きながら、独り言のように呟いた。 「……もっと幹部にククルビータを支持してくれる連中が増えりゃあ、状況も変わるかもしれねえが」 「お断りだねっ!」 「おまえになんぞ頼んじゃいねえよっ!!」  思わずデスクを叩いた衝撃で、書類の山が崩れ、白い紙片が室内に舞う。  そろそろティータイムも終わりのようだ。      ◆     ◆     ◆  書類を拾い集めて部屋を出たところで【きみ】とヨハンは事務の女性に呼び止められた。  なんでもドイツ支部からヨハン宛ての速達郵便が転送されているので引き取って欲しいという。  ヨハンが受け取った郵便物の大半は、ファンから届いた応援の手紙らしかったが、中に一通、大きな定形外の封筒が紛れ込んでいた。  大きな封筒の裏面に差出人の名前はなく、古風に蝋で封がしてある。印章は火炎を噴くドラゴンで、ベオウルフへの手紙に使うには不似合いな代物だ。  封筒には何か硬くて小さなものが同封されており、下のほうが一部だけ歪に膨らんでいる。  ヨハンは珍しく緊張したような表情で封を切り、中身を取り出して拍子抜けした顔で瞬いた。  地図――やや旧い道路地図だ。  その中ほどにある“リングウィネズの森”の下に赤線が引かれ、森の真ん中にある湖らしき空白が、丸で大きく囲まれている。  その地名には聞き覚えがあった。  ここ数日、コマンダー級と思われる黒ドラゴンが頻繁に目撃されているウェールズ地方の森だ。  かなりの数の遭遇者が出ているのにも関わらず、まだ被害者がひとりも出ていないという。  フランス支部のサラが興味を持ち、希望者たちを引率して、現地へ調査に向かったはずだ。  それから古びた金の指輪がひとつ、封に使われた印章と同じドラゴンの意匠が施されている。  そして最後に、ざらざらした手触りの紙に木炭で描かれた若い女の似顔絵と、すりきれた白い便箋が一枚、ひらりと落ちてきた。  内容は手紙というよりは走り書きのメモに近い。 『我が弟子へ  私に代わって、出迎えと身柄の保護を頼む。  年齢は恐らくお前と同じぐらい、髪は赤か褐色、瞳は琥珀色――似顔絵を同封するので参考に。  同封したものと同じ印章の指輪をしているので、それを目印にしてほしい。  とても大事な賓客だ。  万にひとつも間違いのないように、他の幹部には知らせないほうが安全だろう。  協力が必要な場合、おまえが信頼の置ける人物に限りなさい。  ウェールズの守護者がおまえと共にあるように』  筆跡の乱れた手紙の最後には「Magus」の署名がぽつんと記されている。  メイガス(魔導師)の名はペポペポの会における第六階梯――総帥だけが名乗れる位階だ。  ヨハンを弟子と呼び、署名にメイガスの名を記す差出人の正体に、【きみ】が思い至った瞬間には、ヨハンは問題の手紙を引っ掴んで、全速力で廊下を駆け去っていた。  おそらく最短時間でリングウィネズの湖に向かう手段を探しに行ったのだろう。  準備もそこそこにリングウィネズの森に向かったヨハンと彼の同行者たちが、目的地にコマンダー級ドラゴンが二頭も現れ、戦闘が勃発していることを知るのは、現地に到着してからのことになる。 ――――――――――――――――――――――― ■マスターより  初めての方ははじめまして、おなじみの方々には御無沙汰しております。  ペポペポの会担当の黒川実と申します。  本編ではあまりお会いする機会もないでしょうが最後まで楽しんでいただけましたら幸いです。 ・ペポ(略)階梯は、一般スキルの『ペポペポの会とのコネ』及び対竜戦線での活躍で上昇します。 ・シナリオの展開次第では第六、第七階梯にあがる場合もございます。 ・単なる自称に関しては一切認められませんので、アクションをかける際にはお気をつけください。 ・この初期情報を読んだペポペポの会所属PCは、一覧の行動選択肢以外に、以下の選択肢が選べます。 ■関連行動選択肢 A011199 初代総帥の『秘密の客人』を迎えに行くヨハンと行動を共にする (担当:鷺ノ宮アンネローゼ/地域:109) 備考:ペポペポの会に所属するベオウルフ専用行動選択肢です。現在、所在がわからない先代総帥の指示に従って、リングウィネズの森に程近い湖のほとりで待っているはずの賓客を迎えに行きます。ドラゴンと戦う、現地で調査する場合は、それぞれ別の行動選択肢を選んでください。ヨハンは『ペポペポの会』の同志以外とは口もきかないので、他のユニオンに所属しているPCが誤ってこの行動選択肢を選んだ場合、自動的にアクション不採用となる可能性がありますので御了承ください。 X018809 ペポペポの会のベオウルフとして行動する (担当:???/地域:???) 備考:主に、ユニオンの構成員に対してアクションをかけたい場合に選択する行動選択肢です。地域名はアクションに応じて記入ください。  既存のシナリオや、すでにある行動選択肢などの枠にとらわれないアクションに挑戦したい、上級者向けの行動選択肢です。  すでに存在する行動選択肢で事足りる内容と判断されるアクションだった場合は、不採用になる場合がありますので、ご注意ください。  アクションが不採用となった場合は、不採用アクション用のリアクションが送付されます。  それでは、もしも御縁がございましたら戦場にてお会い致しましょう。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――