どらごにっく★あわー!   〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜 ●初期情報 No.Z000403       担当:黒川実 ―――――――――――――――――――――――  開け放たれたままの車窓から吹き込む乾いた風が勢いよく【きみ】の髪を吹き散らす。  ここに来る以前から、何もない場所だというのは先輩からも聞かされていたが、窓の外に広がるのは荒涼たるムーアばかりだった。  最後に対向車とすれ違ったのは一時間以上前だ。  辺境の地だという感慨がひときわ強まる。  小高い丘を越えたところで、車窓に広がる風景が不意に一変した。  荒涼たる景色の中に、巨大な城が出現したのだ。  ハンドルを握っていた先輩団員は、陽気な口調で車内の後輩たちに笑いかける。 「あの古城こそ、我が“ペポペポの会”の本拠地、俺たちは『かぼちゃ大王の城砦』って呼んでるよ」  ぐんぐんと近づいてくる巨大な城は夕日を浴びて新たな仲間の訪問を歓迎しているようにも見えた。      ◆     ◆     ◆  先輩団員の案内に従ってぞろぞろと車から降りたベオウルフたちは【きみ】を含めて全員が、先日のハロウィンに行われた入会試験に合格したばかりのニオファイト(新人)ばかりである。  数あるユニオンの中で【きみ】がペポペポの会に入ろうと思ったかは分からない。  ほんの好奇心からだったのか、それとも一言では説明できない深遠な理由があったのかは知らないが【きみ】は有力ユニオンの中では唯一、入団試験を希望者に課しているユニオンを選んだ。  人里はなれた森の奥、金色かぼちゃの仮面を被る黒ローブの男女が見守る中で幾つかの質問に答え、 最後にトリガーを頭上に掲げて、短い誓いの言葉を唱えたところで、合格だと宣言された。  そして正式に、魔術師としての位階を授けられ、入団の手続きを取るため、遠路はるばるイギリスの片田舎までやって来たのである。  重い音を立てて扉が開く。  豪奢な城内を観光気分で眺めながら、先輩の後について歩いていた【きみ】たちを、ひとりの少女が満面の笑顔で出迎えてくれた。  オレンジを基調とした体の線がよく分かる衣服とマントに魔女帽、鮮やかな赤毛は覚えがある。  テレビのニュースや新聞で何度も見かけた人物、ペポペポの会総帥、ククルビータ[−]だ。  代表のお出迎えは予定外だったのか、先輩団員がびっくりしたようにククルビータに駆け寄る。 「どうしたんですか、総帥!? 確か西海岸戦線に参加しておられると聞いてましたが……」 「今さっき帰ったところだよー、今年は新人さんがいっぱい入ったって聞いたから、ご挨拶しなきゃと思って……」  総帥は嬉しそうに新人たちの顔を順繰りと眺め、ふと【きみ】と目が合うと、にこっと笑う。 「みんな強そうだね、心強いなあ」  正直、見た目だけでは竜殺しの英雄とは思えない貧相な連中もいたが、社交辞令抜き、純粋な好意と親愛の情に満ちた笑顔を向けられて、何人かは妙にそわそわと周囲を見回した。  総帥は先輩の横に並んで、城内を歩き始めた。 「このお城はねー、大昔には“黄金の夜明け”団の持ち物だったこともあるっていう噂があるんだよ。東西の研究書を集めた大きな図書室だってあるし、何百人も入れる大きな食堂もあるの」  本来の持ち主であった貴族が、ドラゴンの侵攻で城を手放し、それをペポペポの会が、本拠地として買い上げたのだそうだ。  確かに『魔女』や『魔術師』を名乗る連中が集う場所として相応しい幻想的な雰囲気が漂う城内で、先輩が思い出したように携帯を取り出す。 「ああ、そうそう、うちでは緊急の連絡やなんかは基本的に携帯かメールで送られるから、持ってない人は、実戦に出る前に必ず準備しとくようにね」 「使い魔や式神を使うんじゃないんですかあ?」  ニヤニヤ笑いながら茶々を入れたのは【きみ】と同じく前回の入団試験で合格したばかりの新人だ。  先輩が一瞬、不快そうに片眉を跳ね上げた横で、総帥が生真面目な表情で答えた 「ファミリアーやシキは、聖別された場所や結界の内部だと、術者とのリンクが途切れて使えないから却って不便なのよねー。それに引き換え携帯なら、電波の届くところならどこだって使えるし、呪文の暗誦も儀式もいらないから効率がいいのよ」 「え」  先輩がぶーっと噴き出すと、本気にしかけていた新人も我に返り、ばつが悪そうに頭を掻く。  現在、科学的に実在が確認されている『魔法』は杖をトリガーにして発動する炎の魔術だけであり、使い魔がいる、式神が使えると主張する人たちは、竜と戦う社会でも、頭のおかしい人と見なされる。  しかし、曲がり角から不意に妖精やユニコーンが飛び出してもおかしくない雰囲気のある城内では、そんな冗談も妙に真実味を帯びてくる。  総帥は笑っている先輩と新人たちを不思議そうに見比べながら、廊下の突き当たりにある両開き扉をゆっくりと押し開けた。  扉の向こうに広がるのは広々とした空間だ。  見上げるほど天井が高く、壁にステンドグラスがきらめいているのを見ると礼拝堂のようだったが、よく見れば、ステンドグラスの意匠は天使や聖母や 聖人ではなく、竜退治の様子を描いたものばかり、神に祈りを捧げる場所にはふさわしくない装飾だ。  扉の正面にあるのは祭壇ではなくてテーブルで、とんがり帽子とマントが載っている。  背中を押されるようにしてテーブルの前に立った【きみ】の肩に先輩が恭しくマントを羽織らせた。  目の前に立った総帥が生真面目な顔で、ちょっと屈んでと小声で【きみ】に告げ、従った【きみ】の頭にとんがり帽子をのせる。  顔をあげた【きみ】と目が合うと、やっと総帥が真面目くさった表情を崩した。 「ようこそ! 我が会は新たな同志を歓迎する!」  総帥は【きみ】に向けて両手を広げると、親愛の情をこめて抱きしめる。  今年16歳になったばかりの総帥からは、清潔なオレンジに似た香りが漂っていた。      ◆     ◆     ◆  ニオファイトたちの歓迎会が終わるのと同時に、総帥は別れの挨拶もそこそこに最前線へ向かった。 「今度は黒海方面に新手が来たらしいって言うんでそっちに行ったよ。あれでも結構な強者だからね、ここで、総帥の椅子を温めてる暇もない」  確かククルビータ総帥は、故郷を解放するためにユニオンに加わったはずだと聞いていた【きみ】がカリフォルニア戦線に行かないのを不思議に思うと先輩は、ユニオンの行動原理である一文を諳んじた。 「Patria mea totus hic mundus est.――要するに、この世界のすべてが生まれた土地、俺たちの故郷というわけだな。総帥は、この星をドラゴンどもから残らず取り戻すために戦うつもりなのさ」  お飾りの総帥は中枢にいないほうが都合がいいと考える連中も多いのだろうという皮肉は【きみ】も先輩も、あえて口にはしなかったが。 ――――――――――――――――――――――― ■関連行動選択肢 X018809 ペポペポの会のベオウルフとして行動する (担当:???/地域:???) 備考:主に、ユニオンの構成員に対してアクションをかけたい場合に選択する行動選択肢です。地域名はアクションに応じて記入ください。  既存のシナリオや、すでにある行動選択肢などの枠にとらわれないアクションに挑戦したい、上級者向けの行動選択肢です。  すでに存在する行動選択肢で事足りる内容と判断されるアクションだった場合は、不採用になる場合がありますので、ご注意ください。  アクションが不採用となった場合は、不採用アクション用のリアクションが送付されます。 X019900 その他の自由行動 (担当:???/地域:???) 備考:既存のシナリオや行動選択肢などの枠にとらわれないアクションに挑戦したい、超上級者向けの行動選択肢です。自分の意志で世界を、物語を作っていきたいというコアでディープなプレイヤーにお薦めです。  ただしアクションが採用されなかった場合は一切描写されず、不採用アクション用のリアクションが送付されます。  すでに存在する行動選択肢で事足りる内容と判断されるアクションをこの行動選択肢に送った場合は、それだけで不採用になります。  また必ず行動する地域番号を記入ください。行動する地域によって、採用率は変わります。 ――――――――――――――――――――――― ここに掲載されている行動選択肢は、『どらごにっく★あわー! 〜竜を退治するだけの簡単なお仕事です〜』の公式サイト(本サイト)に掲載されない場合があります。 ――――――――――――――――――――――― 個人としてゲームを楽しむための交流の範囲を越えない場合に限り、この「初期情報」の複製、サイトへの転載を許可します。著作権等の扱いについては、本サイトを参照ください。 copyright 2009-2010 ELSEWARE, Ltd. ―――――――――――――――――――――――