―忍びの里 退魔殿 退魔 ここを過ぎれば私の管轄ではなくなる。いよいよか・・・。 犬 浮かない顔だな、退魔。 退魔 ここが私の終わりなのだ。物思いにかられたくもなる。 犬 惜しくなったか、その身が。 退魔 そういうわけでは―― ・・・・・ 犬 我らは半蔵様に仕え、その一生を支えてきた。 半蔵様は、我々忍びの末端に居るものを救うために身を粉にし、 最後には汚名をかぶってまでわれらに生きる道を与えてくれた。 その半蔵様に、報いるとするならばいつだ?今であろう。 退魔 わかっている、忘れるものか。 その感謝も、半蔵様を貶めた化け狸への怒りも・・・! 犬 落ち着け、退魔。 仰せのままに、事を成せ・・・! 退魔 (赤、お前は純粋だ。私はお前のようにはなれなかった。) (この命果てる時、かつての仲間は立派な死だと言うだろう。でも――) (それだけでは、悲しすぎるではないか・・・) あの陰陽師は強い・・・。 さらばだ、赤。 犬 退魔・・・。